大きな問題で【渦の中心に立った】私を「俺は何をしたらいいんや」の一言で支えてくれた先輩:稲盛和夫氏のフィロソフィーが息づく企業の現場

稲盛和夫一日一言

野武士の如き先輩の第2弾。大きな品質問題に直面した私は、責任者に集まってもらい休日出勤の依頼をした。【問題のど真ん中に立って渦を回そうとしていた】私を「たった一言」で支え、自らも渦に巻き込まれてくれた野武士先輩。稲盛和夫氏のフィロソフィーの息づく企業の現場での体験

品質問題

ある年の4月21日にお客様から大きな品質問題の最初の一報をもらった。対象は大きなプロジェクトとして量産が始まったばかりの製品。波及は膨大で問題は深刻。お客様=30代半ばの中堅技術者が一人で飛んできた。

そのままそのお客様は4月27日まで滞在。緊急でやるべきことは山ほどあった。私は「問題を起こした側の責任者」として一緒に取り組んだ。

  • 一旦、生産ラインを止めて
  • 製品の製造履歴を片っ端から洗い出し
  • 現象と履歴の関係を調査し
  • 波及範囲を特定するヒントを探し
  • 波及品の処置方法を検討し
  • 問題品の信頼性を評価した。

お客様の「人となり」

来場されたお客様の「人となり」を記す。

  • 一人で来場
  • その後も誰かを呼ぶことなく一人で対応
  • 判断は常にロジカル
  • 我々に無茶は要求しても無理は要求しない
  • 感情的になることはない
  • 決断は早くて明確
  • 都度、自社に連絡して相談することはない

対象の製品はお客様にとっても巨大なプロジェクトに関わる製品。下手するとこのプロジェクトが止まってしまう可能性もある大問題。にも関わらず一人で仕切って的確に判断をした。

品質問題の対応をしていると稀にこのような人物と出会えることがある。いつの間にか「尊敬の念」と「同志のような感情」を抱いている自分に気づいた。

大きな品質問題の対応は困難を極める。体力も知力も限界まで疲弊もする事も多いが、こんな人物と出会い一緒に仕事ができることは大きなメリット。・・・もちろんこの時はそんなことをじっくりと考える余裕はなかったが・・・

ゴールデンウィーク

お客様は4月27日=GW:ゴールデンウィークの前日に一旦、自社に戻られた。でも、まだまだ調査は端緒についたばかり。

自社に戻ってGW中に状況の確認と調査をして整理をするとのこと。自然と頭が下がる。

もちろん、我々の側でも調査、実験、評価などやるべきことは沢山残っていた。お客様とそれぞれのアクションと期日を設定して約束した。

事業部責任者会議

約束を守るにはGW中にかなりの人数が休日出勤する必要があることは明らかだった。

私には「問題の責任者としての責任」に加えて「何があってもお客様との約束を果たす」十分すぎる理由があった。

そこで事業部長に依頼して全ての部門の責任者に会議室に集まってもらった。4月27日=GWに入る前日の14時。

会議の冒頭、問題の状況、その時点でわかっていること、残っている調査項目、お客様の要求事項を責任者皆んなに伝えて

「少なくとも30名は出勤してもらう必要があります。協力していだけませんか?」

と、GW中休みを返上して出勤してほしいこと。さらに必要な人数を伝えた。

紛糾と沈黙

最初の事業部長の回答は

「こんなGWの前日に・・・しかも急に流石にそんなこと言われれも・・無理やろ」

「GW明けまで待ってもらえんのか?」

というものだった。私は

「そんな余裕はありません」

「一刻でも早く調査しなければならないんです。」

「そもそも我々が起こした問題でお客様があれだけやってくれているんです。」

「我々がやらんでどうするんですか!?」

と訴えた。さらに事業部長は

「そう言ってもな。。。皆んな予定あるし。。」

「これから社員の休日出勤の手続きをすると、総務部門もいい顔はしないんじゃないか?」

と、続ける。少し苛立ってしまった私は

「だったら責任者が全員GWやめて出勤しましょうよ!それならいいでしょ!」

と、言いつのった。会議室は重苦しい沈黙に包まれた。

俺は何をしたらいいんや

沈黙を破ったのは野武士先輩の、静かな、けれどきっぱりとした一言。

「俺は、何をしたらいいんや?」

この言葉とこの光景は一生忘れない。

  • どうすべきか?と意見を言うわけでもなく
  • 皆んなを説得するわけでもなく
  • ただ。【俺はやる!】ことを宣言してくれた。

この一言をきっかけに「俺も出るわ」「俺も」の声が続いた。責任者を中心にGWの出勤体制が決まり割り当てが決まっていった。この年のGWは皆んなで必死で働き続けた。

一人の【主体的な行動】が【インサイドアウト】として周りに広がった。

渦の中心に立つ

あの日、大きな品質問題のど真ん中にいた私は、これを「自分の問題」として自分の腹に落とし、組織や階層を超えて【渦の中心に立って】これを回そうしていた。

【渦の中心に立つ】

会社など集団の中で仕事を円滑に進めていくには、それがどんな仕事であれ必ず、エネルギッシュに中心的役割を果たしてくれる人が必要になります。

そのような人を中心にあたかも上昇気流が湧き起こるかのように、全員を巻き込で組織が大きく動いていく。そんな自分から積極的に仕事に向かい、周囲に働きかけ、仕事をダイナミックに進めていける人を、私は「渦の中心で仕事をしている人」と表現しています。

『稲盛和夫一日一言』5月7日分より

そして、この【渦】に自ら巻き込まれてくれた先輩がいた。

巻き込まれてくれた仲間

この経験をまとめていく中で改めて気づいてことがある。それはこの日の責任者会議の中で

  • 誰一人「それはあなたの責任やろ!」と私を責める者はなく
  • 誰一人自分の代わりに部下を出勤させようとした者もいなかった。

全員が自分の事業部の大きな品質問題の解決に取り組んでいた。呼びかけに躊躇した人は居たが、そもそもこれは自分達全員の問題であるとの認識がベースにあった。

誰かが渦を回し始めると、全員がそれぞれの立場で全力で参画する。緊急事態には組織を超えて、立場を超えて、マネジメントから真っ先に手を上げて「俺は何をしらたいいんや」と参画する。そこに組織や立場の壁はなかった。

稲盛和夫のフィロソフィ【渦の中心にたつ】が成り立つ企業の現場の体験。

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