⑤ 正確に情報を集める 其の1:先入観にとらわれずに正確に事実を把握する

問題には解き方がある
Metal gears with little plant on white background.

まず最初に問題に関する情報を集める。偏りなく正確に事実を把握することが大切。最初に原因について先入観を持ってしまうと、集める情報が偏り、原因を見誤り、結果問題は解けない。

先入観を持って調査したために原因を見誤った事例

失敗事例から入る。「先入観なく正確に事実を把握する」ことができなかった為に、本当の原因を見誤まり、無駄な対策を取ってしまった事例を紹介する。

問題の概要:薬液の飛沫

問題は薬液の飛沫による軽微な薬傷。化学物質である薬液を使っている製造工程で、浴槽に薬液を補充する時にその飛沫が手首に付着。軽い薬傷を起こしてしまった事例。対象は20代の女性。

薬液の補充をするときには手首までカバーする「保護手袋」の着用がルール。保護手袋を着用していればこの薬傷は発生しなかったはず。しかし彼女は保護手袋を着けず薬液の補充をしていた。

思い込みによる調査

この職場では配属時に、また定期的にも繰り返し「安全教育」を行っていた。問題発生の前月にも職場全員が安全教育を受けていた。教育では「保護手袋の着用」は安全作業の基本中の基本として何回も繰り返し教えられていた。それでもこのトラブルは発生した。

確かに薬液を補充をする時にいちいち保護手袋を着けることは手間。きっと、この手間を面倒に思い、保護手袋の着用をしなかったのだろう。最初からそんな先入観があった。

彼女からの聞き取り調査にこの先入観が影響した。彼女に対する「ルールは知ってるよね?」「なぜ保護手袋を着けてなかったの?」の聞き取りは「質問」というより「詰問」になっていたかもしれない。

答えは

  • 薬液を補充するときに保護手袋をしなければならないというルールは知っていた。
  • しかし自分は「慣れている」し「しなくても大丈夫」だと思っていた。

というものだった。この聞き取りだけで調査を終えた。

原因の推定と対策

聞き取り調査から、これまでやってきた「安全教育」では一人一人に対して、安全を守る事の大切さが充分に伝えられていないと考えた。この「安全教育」の不徹底が原因と判断した。

これまでの安全教育では一番基本的なルールすらしっかりと伝えることができていない。何よりも社員の安全が大切であることも伝えることができていなかった。と総括した。

安全教育の資料とプログラムの見直しを始めた。「危険を自分の事として感じることができる」安全教育のコンテンツに作り直した。事故やトラブルによる怪我や薬傷の生々しい写真を用意した。この新しい教育プログラムによる全員に対する教育を開始しようとしていた。

追加調査で新たな5つの事実が見えてきた

そんな中、この部署の責任者がもう一度このトラブルの状況を客観的に調査してくれた。

  1. この職場のメンバーは全員で約10名
  2. 彼女以外は全員が男性
  3. 使っている保護手袋は一つだけで皆で共有している
  4. 手袋のサイズは男性向けの大きなもの
  5. 皆が同じ手袋を使うために手袋の中はいつも汗で湿っている 

この5つの事実がわかった。

2つの本当の原因とたった1つの有効な対策

この5つの事実を知ってもう一度彼女に聞き取り調査をした。今度の聞き取りは「手袋をしていなかった理由」を純粋に知るための質問になった。今度は彼女は本当の2つの原因を教えてくれた。

  • 彼女が手袋をしなかった本当の2つの原因
    1. 元々保護手袋のサイズが大き過ぎて使いにくい。かえって危ないと感じていた。
    2. 職場の他のメンバー。特に周りの男性の汗で湿った保護手袋に手を入れることに生理的に抵抗があった 

シンプルな2つの本当の原因とシンプルな2つの本当の対策が見えてきた。この対策の方が有効であることは明らかだった。

  • 対策
    1. 彼女のサイズに合った保護手袋を用意する事
    2. 保護手袋は一つに一つずつ用意する事

まとめ

この問題では先入観に基づく調査により大きな回り道をした。

問題を解決するために一番大切なことは先入観にとらわれず、客観的に問題に関する情報を集め「偏りなく正確に事実を把握すること」。調査は、現場に行き、現場を見て、現物を見て、本人の話を聞く。

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① 仕事に行き詰まっていませんか?:仕事とは「問題を解く」こと ⭐️問題には解き方がある⭐️

②「問題の解き方」の全体像:有効な解決の流れ フレームワーク「8D・8Step・KT法」から

③ 問題を認識する:「見える化」「認識」「覚悟」→問題を解くことを楽しむ=Enjoy the problem

④ 解決したい問題の対象を絞り込む:問題の構造をシンプルにして丁寧に原因を調べる

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