母の俳句に残っている昭和・平成の「家族の記憶」

俳句

母の病気をきっかけに母が35年間書き溜めてきた俳句を句帳に筆写し始めた。和紙の俳句ノートに筆で母の俳句を読み、選び、書き綴る。そこには35年間の家族の記憶がそのままに残っていた。

母の俳句ノート

入院をきっかけに、母が田舎から出てきて近くに越してきた。母は51歳で妹が高校の時の父兄会の文化教室をきっかけに俳句を始めた。その時以来の俳句ノートを持ってきた。鉛筆書き。ひと月に5句から多くても8句。あちこち推敲のために訂正されている。句集に提出した俳句には丸印が付けられている。気に入った順に数字も振ってある。他にあると言う。叔母に頼んで田舎の実家から送ってもらったノートは全部で5、6冊。最初の日付は1987年だった。

俳句に描かれていた風景

俳句ノートのページを捲ると・・・そこには、30年以上前の家族の風景があった。

  1. 専業主婦から福祉関連の仕事を始めた母・・・の姿
  2. 今はもう亡き父は、定年を間近にしており
  3. 来年還暦を迎える私は、当時は就職し結婚したばかりであり、
  4. こんな母の面倒を見てくれて居る妻が、新妻として、また新米の嫁として登場し
  5. 最近孫を与えてくれた娘も、このノートの中では、生まれたばかりの幼子
  6. 義母の介護をしている上の妹は、もうすぐ嫁ぐ娘として
  7. 大学准教授をしている下の妹は、高校生として

 33年前の家族の日々がそこにあった。

鳩居堂で買った和紙の手帳

京都、寺町の鳩居堂で赤い表紙の和紙の手帖を買う。 一ページに縦書きに五つの欄がある。まず欄外に、その俳句が書かれた月日とその時の母の年齢を記す。  

ノートの中から選んだ句を一つずつ筆で書き写していく。昔、習字を習ったとき以来の筆で拙い文字ではあるが母は喜んでくれている。時間がある時に1日に5句から10句。それでも丁寧に筆写していく。

家族の記憶

母の句が一句ずつ赤い和紙の句帳に増えていく。 家族の記憶がゆっくりと形を成していく。俳句ノートを開き、そこに書かれている俳句を読む。母の推敲を辿る。母のつけた順番を辿る。知らない季語に出逢う。季語の意味を調べる。自分の好きな俳句を選ぶ。

静かな時間。ノートを開き、読み、調べ、辿り、選ぶ。

母との会話

赤い和紙の句帳に書き写した俳句を母に見せる。何かしら思い出した事を語ってくれる。30年の時を一緒に辿る

進みはゆっくり。 今1990年の途中。ようやく3年分を書いて73句。 あと30年の歴史を少しずつ辿るつもり。

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