毎年1回、QMS=品質マネジメントシステムに基づく「内部監査」をやっている。これは毎年やらなければならない義務=ルーティン。それがたった一つの『この内部監査のユーザーは誰なの?』の質問に答えを出すための取り組みで義務はやりがいに変わった。体験した劇的な変化。
内部監査とは
QMS=品質マネジメントシステムに基づく「内部監査」とはISO-9001の要求事項をベースに自分達で決めたルールに従って各部門の業務が適切に行われているのかを確認するための重要なプロセス。
ISO-9001の認証を受けている企業は、最低年に1回の「内部監査」が義務付けられている。実施した監査記録は、公的認証機関により、これも年に1回行われる第3者監査でチェックされる。
内部監査の計画
品質保証部門と「資格を持った」監査員で年に1回「内部監査」を計画して実行。具体的には
- 今年の監査の概要を決めて必要な監査員の人数を算出
- 監査資格を持っている(トレーニングを受けて試験に合格した)人の中から監査員を選出。。
- それぞれの監査員と監査部門を決める。
- 監査を受ける被監査部門とスケジュールを調整。
- 監査を実施。
- 監査結果(見つけた問題点など)をレポートにして被監査部門にフィードバック。
- 被監査部門は問題点を改善して報告。
- 全ての問題点の改善が確認されて監査完了。
結構大変。時間と手間がかかる。
監査員のマインド
資格を持っているとは言え監査員にとっても、この内部監査は自ら進んでやっていたわけではなかった。なにしろ・・・
- 通常の仕事に加えて監査の仕事が増える。
- トレーニングを受けてはいるものの実際に監査するには知識も力量も問われる。
- 内部監査を行っても喜んではくれない。
- 問題点を見つけることができないと 監査の有効性を疑われ
- 問題点を見つけても 指摘された側から感謝はされない
- 監査後も改善結果の確認とレポート作成の仕事が残る。
結局「労多くして、その割には達成感の少ない」仕事と認識されていた。
監査を受ける側のマインド
監査を受ける側=被監査部門にとっても内部監査はある意味年に一回の「厄介事」でもあった。
- 監査受審のための準備と対応の時間がかかる。
- 問題点があると改善を求められる。
- 改善については最終承認されるまで報告書の提出を求められる。
済ますことが目的に・・・
監査員と監査を受ける側の双方が義務=ルーティンとしてやっていたこの構造では「内部監査の質」が上がるはずもなかった。
内部監査をやってもなかなか問題点の改善は進まなかった。ある意味「内部監査をした」という記録を残すこと=済ますことが目的になってしまっていた。
一つの質問
ある年の報告会で内部監査の結果を一人のマネジメントに報告した。そこで一つの質問をもらった。
【この内部監査のユーザーは誰なの?】
一瞬、報告者の発言と思考が止まった。さらに追い討ちの質問は
【一体、誰のために?何のために? この内部監査をやっているの?】
質問に向き合う
この質問に品質保証部門と監査員で真正面から向き合った。目的を掘ってみた。
- やらないといけない義務だからからやっている・・・訳ではなく
- 公的認証機関に「実施していることを報告」するためにやっている・・・訳でもなく
- マネジメントを報告するためにやってる・・・訳でもないはず。
いつの間にか「内部監査」の「目的」がすっぽりと抜けて「手段」が目的化していたことに気づく。結果「内部監査」を価値も喜びも生まないタダの作業にしてしまっていた。
そうではなく被監査部門のためにやっているはず。ユーザーは被監査部門という答えに辿り着いた。
変革
「ユーザーのため内部監査とは?」
これがみんなの合言葉になった。アイデアが次々に生まれて適用されていった。
- 被監査部門に「あなたのための内部監査」であることを徹底的に説明
- 事前に被監査部門の責任者にリクエストをもらう。
- リクエストに基づいて事前資料をもらって徹底的に読み込む。
- 事前ミーティングで「どうやって被監査部門に価値を提供するか?」の作戦会議
- 監査当日は「改善すべき急所を一緒に探す」姿勢で臨み
- 監査結果を「より深い改善につなげるための」報告書にするための事後ミーティングをして
- 監査後には監査を受けたメンバーにアンケートを実施
- 監査は自分の部門の役に立ったか?
- 改善のきっかけになる価値ある気付きがあったか?
- 監査員は丁寧に改善に導くコミュニケーションが取れていたか?
- 重箱の隅を突くような意味のない指摘はしていないか?
- さらに自由記述でコメントをもらい
- アンケートの結果を翌年の内部監査に活かす仕組みにした。
【目的】が明確になるとアイデアが湧き、方法は激変した。
成果
被監査部門からのアンケートは初年度から高評価。さらに翌年も翌々年も評価は上がっていった。
感謝のコメントも増え始め、事前準備にも積極的に協力してもらえるようになっていった。
何よりも、監査員の自己肯定感が上がった。自分達が作業をやっているのではなく重要な価値を生み出す仕事、何よりもユーザーに喜んでもらえる仕事をしているという手応えを感じ始めた。
目的を明確にして貢献する
振り返ってみると原則は二つ
- 仕事の目的を明確にする。
- 貢献することで仕事は価値を創造し、相手に喜んでもらえる。
パワークエスチョン
「内部監査」は義務=ルーティンではなくやりがいになった。
【この内部監査のユーザーは誰なの?】
この質問が仕事の目的を考えさせてくれた。このパワークエスチョンのもたらした効果を体感。今度は、自分自身が『本質を問いかけ、大きな価値を生み出す質問』ができることを目指して、コーチングを学んでいる。
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