大きな失敗やトラブルに遭遇すると後悔や恐れ、不安、迷いなどのネガティブな感情に苛まれる。幾度となく経験してきたそんな状況で私を支えてくれた【感性的な悩みをしない】の稲盛和夫の言葉。『稲盛和夫一日一言』の本で読むことができるこの言葉が今も私を支えてくれている。
大きな後悔や不安など
仕事に失敗やトラブルはつきもの。仕事で大きな失敗をするとタダさえ忙しいことに加えて、大きな後悔や恐れ、不安、迷いなどに苛まれることになる。
大きなトラブル
もう10年以上前になるが致命的な不良をお客様に流出し大きな品質問題にしてしまったことがある。原因の究明、波及の特定や波及品の処置、対策策定などこの問題の解決には何ヶ月もかかった。
最終的にはお客様にも所属する会社にも多大な損害を与えることになった。
抱えたネガティブ感情
問題が日に日に大きくなっていくその中で自分一人では抱えきれないほどの後悔・恐れ・不安・迷いなどのネガティブな感情に苛まれた。具体的には
- なぜこうなる前に正しい判断ができなかったのだろうか?という後悔
- みんなが「私がこのトラブルを避け得なかった事実」を知っている事への恐れ
- 自分にこの仕事を続けていく力があるのだろうか?という不安
- 本来なら自分が責任を取って辞めるべきではないかの迷い
などなど、心は千々に乱れた。
対応に追われる日々
問題の発生直後からその対応に追われた。身体的には辛かったが一方でそれは救いでもあった。忙しさを口実にこれらのネガティブな感情に真正面から向き合うことを逃げることができた。
調査、整理、検討、レポート作成、報告、製品の手当て、改善、対策の実施、効果確認、効果の報告と矢継ぎ早にやらなければならないことをこなしていった。
その間にも社内の会議、お客様との会議を何回も何回も繰り返した。文字通り「寝る間もなく」その対応に追われる日々は約3ヶ月続いた。
ようやくひと段落ついた頃に、改めてこの後悔や恐れ、不安、迷いというネガティブ感情と向き合うことになった。ついに逃げ道も無くなっていた。
この時の『ネガティブな感情に押し潰されそうになった自分』を支えてくれたのは一つの【出来事】と一つの【気付き】だった。
出来事:監査役の一言
一つ目の出来事は当時の監査役に頂いた一言。問題の対応で飛び回っていたある日、出張での移動中の電車の中で監査役にばったり会った。
「自分がこの仕事を続けられるのか」の不安と「責任をとって辞めるべきではないか?」と迷っていた私は、この機会を活かして相談を持ちかけた。
「ご存知の通り、今回の問題で会社に大きな損害を与えてしまいました。責任をとって辞職しようと思うのですが・・・」
私の言葉をとても穏やかな態度で受け止めてくれたその監査役は、
「なるほどね・・・」
「でもね。それくらいで潰れる会社じゃないよ。【責任を取る】ってことは辞める事じゃないんじゃないかな。その分を仕事で取り返すってことじゃないか?」
最後は(にやっと笑って)「何倍にもして取り返してくれよ!」と励ましてくれた。
この出来事がまず不安と迷いから抜け出る最初のきっかけになった。
気付き:【感性的な悩みをしない】
もう一つの気付きは【感性的な悩みはしない】と言う稲盛和夫の言葉。
失敗してしまった時もクヨクヨと感性的に悩んではなりません!失敗した原因をよく考え、厳しく自省をしなればなりません。しかし十分に反省したのであれば、あとは忘れてしまうことです。そんなことより精進に努めることです。そうすれば魂は磨かれ、心は高まり運命は切り開かれていく
稲盛和夫『一日一言』より抜粋 7月23日
人生や仕事で起きる障害や問題に、感情や感性のレベルでとらわれても何も解決しない。苦しければ苦しいほど、理性を使うべきだ。合理的に考え尽くし、一生懸命に努力をし、まさに「人事を尽くし」たならあとはうまくいくのだろうかなどと余計な心配はせずにただ成功を信じて「天命を待つ」ことだ。
稲盛和夫『一日一言』より抜粋 5月28にち
この言葉に向き合って後悔や恐れ・不安・迷いのどれも自分自身ではコントローすることができない【感性的な悩み】でしかないことに気づいた。
やるべきことは理性を使って、合理的に考え尽くし、一生懸命に人事を尽くすこと。ここに100%集中することだけ。これは自分でコントロールできることだった。
- 事実を調査して、ロジカルに問題の原因を究明
- 事実をベースに、本来自分が何ができたか?何を成すべきだったかを厳しく冷静に検証
- 再発しないための対策の策定と実行に全力で取り組む
- 変えることのできない感性的な悩みは忘れて、ただ100%出来ることに努めて天命を待つ
この4つが行動の基準になった。
『感性的な悩み』からの解放
監査役の一言の出来事とこの【感性的な悩みをしない】という稲盛和夫の言葉による気付きによって、その後はだひたすらにこの4つの基準に沿って行動することに集中し、自分の中の後悔・恐れ・不安・悩みを解消することができた。
習慣化
その後、仕事で大きな問題に直面した時には、いつもこの【感性的な悩みをしない】の立ち位置に戻る事を意識して習慣にしている。
もちろん【感性的な悩みはしない】代わりに問題そのものについては徹底的にロジカルに検証する。振り返りも徹底して行う。調査と今後、同じ問題を起こさないための対策に全力を尽くす。
- 事実をニュートラルに調査する
- 原因を特定する
- 原因を永久に排除できる対策を策定する
- 対策を実行する
感性的な悩みを手放して【今から自分で出来ること】=つまり【影響の輪の中】に集中することでネガティブな感情の源泉であった問題をポジティブな楽しみに変えることができた。
- 調査の結果から問題の全体像が見え始めていく喜び
- 原因が特定できた時の感動
- 二度と問題を発生させない対策を見つけた時の達成感
- 対策を施行した時の充実感
問題を解決するという仕事を楽しむことができるようになった。
Enjoy The Problem
この事をきっかけにEnjoy The Problemの言葉を私の【マントラ】とした。このEnjoy the problemの言葉は、問題に対応する仕事の中で常に私と共にある。
日常付きまとう、後悔や不安の解消についても下記の記事に「7つの習慣」からの学びの視点で書いている。併せて読んで頂ければありがたい。

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