過去受けた研修に「部下を説得する」というワークがあった。「自分の部下に他部署への異動を内示して承諾をもらう」ワーク。しかしこの部下役はなかなか承諾しない。参加者のほとんどが説得に失敗。過去、成功した先輩に尋ねると「話さず」に「聴いて」いた!!コーチングマインドそのもの。
説得のワーク
随分前になるが、会社の中での資格の昇格試験を兼ねた3日間の研修があった。
いくつかのワークがある中の一つに「自分の部下役に扮した人に対して他の部署への異動を内示して、説得し、部下の承諾をもらう」というものがあった。
制限時間は10分。一対一のワーク。対話は動画で撮影されていて、後で自分で自分の説得の様子を見ることになる。
私のケース
課題に対してすぐにロジックを組み立てる癖のある私。早速、二つのロジックを組み立てた。
- 一つ目:この異動が「部下にとって成長の良い機会であること」
- 二つ目:この異動が「会社にとっても適材適所としてベストの選択であること」
OK!これで部下役の彼を説得できると踏んで取り組んだ。
部下役の反応
やってみるとそうはいかない。この部下役が手強く、全くこちらの筋書きに乗ってこない。
- そんな仕事はしたくない。
- 異動先の勤務地に行けない理由がある。
- 今の職場でやりたいことが残っている。
そのうちに誰が決めたのか?納得できない。と言い募り、結局、最後まで説得しきれず、承諾を得ることができないままにワークは終了した。
動画に映る自分の姿
あとで動画で自分の「説得」の様子をみる。
- 最初から早速2つのロジックを話し出す自分。
- 制限時間10分の最初の2分でもう相手の反応にイライラし始めている。
- 「だからさー!君のためにも会社のためにもなるんだよ!」言葉がすぐに高圧的になっていく、
- 用意したロジックを使い尽くして手詰まりになっている自分が見える
動画の中に自分の焦りが手に取るように見える。
成功した先輩との会話
しばらく後、お昼休みにある先輩と話す中で、この研修の話題にになった。
- 「あの部下に転勤を説得するワーク!難しいですよね?」
- 「説得できる人っているんでしょうか?」の私の言葉に
- 「俺は【うん】って言わせたよ!」の先輩の言葉
- 「えっ!そうなんですか?どうやって説得したんですか?」
- 「うーーん。お前さ、ああじゃ・・こうじゃ・・いろんなことを喋ったんやろう?そうじゃない!聴けばいいんだよ」
そう言って仕事に戻る先輩。
残された自分の思考が中断する。「聴く?」「説得するのに聴く?」「どういうこと?」「話さずに・・・聴く?」
コーチングを学んで
コーチングを学んだ今、この時の先輩の言葉が腹に落ちる。
あの時の自分の姿がよみがえる。コーチングの基本である『観察』も『傾聴』もできていない。そんな自分の言葉が相手にとどく訳がないことがわかる。
信頼関係ができていない相手の心に「心の通わない冷たいロジック」をいくら並べても、その言葉は届かない。
『7つの習慣』
『7つの習慣』にも同じことことが書いてあった。第5の習慣は【まず理解に徹し、そして理解される】。この原則の視点からも、自分と先輩の違いが見えてくる。
相手のことを何も理解しようせず、一方的に主張し、これを相手に理解させようとする自分。明らかな原則違反。
先輩は自然に【まず理解に徹し、そして理解される】の原則に沿った行動をしていた。結果、説得に成功し承諾をもらっていた。
もう一度やり直すとしたら
- まず部下に今の仕事の状況を尋ねて、話をしてもらいこれを聴く
- 次に家族の状況を尋ねて、話をしてもらいこれを聴く
- この時の部下の姿勢や様子を観察する
- 聴いた事実を受容して、受け取った相手の感情に共感する
- 異動の内示と理由を伝える
- この内示に対する部下の考えと感情を尋ねる
- 異動に対するどうするのか?を一緒に考える
予想される結果
部下役の方がこのコミュニケーション在り方で説得に応じるのかどうかはわからない。しかし、きっとあの時とは違った結果が得られたはず。
毎日のコミュニケーション
今、どうだろう?
- 部下や仲間や上司とのコミュニケーションで先に聴いているか?
- 先に話してはいないか?
- 相手を観察し傾聴しているか?
- 先に理解に徹しているか?
- 何よりも相手のことを大切に思っているか?
【話すより前に聴く】ことを大切な学びとし、これからの人と関わるときの習慣にする。
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