『サピエンス全史』が明かす 科学革命が進歩を生み資本主義発展に繋がった

サピエンス全史
"Reading book, canon 1Ds mark III"

サピエンス全史では人類の歴史に「3つの革命」があったと説く。その3つ目が「科学革命」。この時に人類は初めて「神ですら知らないことがあること」を認める。「知らないことを発見しようとする」それが「進歩」となり「成長」をもたらし「資本主義」の発展の根幹になった。

サピエンス全史が示す3つの革命

ユヴァル・ノア・ハラリ氏が「サピエンス全史」で説く人類の大きなパラダイムシフトは以下の3つ。このそれぞれが人類の歴史を大きく変えた転換点となった革命であったと説く。

  1. 認知革命 :7万年前
  2. 農業革命 :1万2千年前
  3. 科学革命 :500年前

「科学革命」以前

3つ目の「科学革命」。ユヴァル・ノア・ハラリ氏の意味するこの革命は「単なる科学の発展」ではない。もっともっと大きなパラダイムシフトが起こったことを提示する。

パラダイムシフトの象徴として語られているのは世界地図。中世以前の世界地図には「空白」がない。「全能の神が全てを知っておられるはず」が前提の世界地図には当然欠けた空白はなかった。

そもそも「進歩」が存在しない世界

この時代は「神々のおられた理想の世界から少しずつ悪くなってきている」との世界観を持っている。良くて現状維持。昨日と同じ今日があり、今日と同じ明日がある。これが延々と続く世界。

「今日より明日が良くなる」気配は全くなく、この時代に「進歩」という概念はなかった。

「科学革命」が変えたもの

「科学革命」がこのパラダイムを覆した。一番大きなインパクトを与えた変化は「全能の神ですら知らないことがあること」ことの認知。「知らないことがある」からこそ、初めて「知るための活動」が生まれる。

具体的な事例は世界地図に現れる。「神でさえ知らない空白の地」を地図に白抜きで残すようになった。未知の土地=白抜きを航海によって埋めようとし始める。これが大航海時代の始まり。

「進歩」や「成長」というパラダイムの入手

空白の世界地図を埋めるためにヨーロッパ人はアメリカ大陸を「発見」する。彼らにとって未知の植物や動物を「発見する」

航海で「発見」した土地を自らの世界と領土に組み入れる。航海や、知識の拡大に科学が役に立つ。科学が利益に繋がる時代になる。ヨーロッパ人は次第に豊かになっていく。

この時に人類は初めて「進歩する」という概念=パラダイムを手に入れた。

今や昨日より今日、今日より明日、へと世界は広がり豊かになる。この「進歩」が「成長」の概念につながっていく。

「成長」が資本主義発展の根幹

「成長」の概念は未来への投資を生む。この未来への投資がそのまま資本主義の根幹となる思想になっていく。ユヴァル氏の論理はこう展開される。

世界の豊かさ=パイの拡大

「成長しない世界」では「誰かがよりも豊かになるためには他の人の取り分を搾取する」しかない。そのチャンスは少ない。

一方で「進歩」する世界では「成長」により「世界の豊かさのパイ」が拡大し続ける。この「豊かさのパイ」の拡大は多くの人に豊かになるチャンスを提供する。チャンスの広がりは「成長」に対する「信用」を生む。

マクドーナッツ婦人の事例

サピエンス全史ではカリフォルニア州の銀行と建築業者とレストランを始めるマクドーナッツ婦人の事例でこの「信用」による「成長」の仕組みを説明する。

  1. 建築業者が銀行に100万ドル現金で預ける
  2. マクドーナッツ夫人がレストラン事業のために建築業者にレストラン建築を依頼
  3. 建築業者はレストラン建築に対して100万ドルを見積もる
  4. マクドーナッツ夫人は銀行から100万ドルの融資を取り付ける
  5. マクドーナッツ夫人は建築業者に小切手を発行する
  6. レストラン建築費用が嵩み建築費用は200万ドルになる
  7. 建築業者はマクドーナッツ婦人に追加見積もりを提出する。
  8. マクドーナッツ夫人は銀行から100万ドルの追加融資を取り付ける
  9. 追加の100万ドルも小切手で建築業者に支払う

最初の銀行の預金は建築業者の100万ドルの現金しかなかった。しかし、マクドーナッツ婦人への「信用」を元にその金融資産は300万ドルに膨れ上がる。現金は相変わらず100万ドルしかないにも関わらず。

マクドーナッツ夫人がレストラン事業を成功させるに違いないという信頼を銀行・建築業者を含む3者が共有することで、現金としては存在しない無形の金融資産は3倍になる。

世界の豊かさの拡大

資本主義の根幹には「世界の豊かさのパイは拡大し続けていく」という思想がある。これもユヴァル氏にとっては人類を発展させた「虚構」の一つなのだろう。皆が信じることによって現実的な変化をもたらす「虚構」

「世界の豊かさの拡大」の思想の繋がり

現代の投資の王道であるインデックスファンド「S &P500」や「全世界株式」への投資への信頼の根本にはこの「世界の豊かさは拡大し続けている」への依存がある。

また「世界の限りない豊かさ」の考え方はスティーブン・R・コヴィー博士の「豊かさマインド」にも響き合う。

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ユヴァル・ノア・ハラリ氏の示してくれた3つ目のパラダイムシフトを心ゆくまで楽しんだ。さらにここから「インデックス投資」や「7つの習慣」で学んだ考え方が繋がっていく。この世界の大きな構造図を少しずつ垣間見る楽しみを与えてくれる「サピエンス全史」。

世界の成り立ちに興味を持つ人にはおすすめ。


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