カミさんの友達に誘われて京都法然院で8月22日に行われた「electronic evening 電子音楽の夕べ2022年」に行った。「哲学の道」の奥の古寺に流れる電子音楽と屏風の映像・蝉の声・茶人の点てるお茶。夜が更けると庭の蝉の声が次第に秋の虫の音に変わっていく。昼から夜へ。夏から秋へ。平安から現代へ。
誘われて
カミさんの友達は音楽家。アーティストの感性で色々なイベントに誘ってくれる。この「electronic evening 電子音楽の夕べ2022年」に同行。このイベントは2002年から行われていて今年で20回目。場所は京都の哲学の道の近くの法然院。初めて訪れた。
その「法然」の名が示す通り浄土宗のお寺。ここではコンサートやイベント、個展などにお寺を開放しているらしい。Home pageを見ると「法然院サンガ」としての活動とのこと。ちなみに「サンガ」という名前は共同体を意味するサンスクリット語からきていると説明があった。サッカーJリーグの「京都サンガ」の名前も同じこのサンスクリット語の「サンガ」が語源。
法然院の中に入る。中庭には三本の古木。手水鉢にはピンクと白の花びらが浮かぶ。

イベントの始まり
奥の和室でイベントが始まる。まだ外は明るい。蝉の声しきり。障子の開け放たれた和室で、武田真彦さんと箏奏者・今西紅雪さんのデュオが静かに始まった。4つに折れた屏風に流れ続ける抽象的な映像。アレンジされた琴の音。アンビエントミュージックとは環境音楽。背景の音楽として聴き流して良いのだろう。
縁側の外の庭は蝉の声で溢れている。庭に向いて座る。蝉の声を全身に浴びながら背中の演奏を聴く。蝉の声を通奏低音として琴の音を楽しむ。時折「ししおどし」がアクセントを刻む。なぜか小松左京氏の「岬にて」を思い出す。
「ゴルディアスの結び目」 小松左京:短編集 「岬にて」を含む
お茶席
新進気鋭の茶人:中山福太朗氏が手がけるお茶席が別室に用意されている。四隅に立てられたバーライトの光の中に無造作に置きかえられていく立方体や円柱やワイヤーフレームが影を作る。その影が空間を形創っていく。
敷かれた緋毛氈の上で抹茶と和菓子を頂く。お茶の香りと和菓子の微かな甘みをゆっくりと味わう。
夜が更けて
和室に戻ると四倉由公彦氏の演奏が始まっている。何回も何回も繰り返す波の音。日は落ちて外は暗くなっている。その庭には紫や緑や白の光の粒がこぼれている。暑気は去り、脱いでいた上着を羽織る。
ふと気づくと通奏低音だったはずの外の蝉の声はもう聞こえてこない。代わりに聞こえてくるのは秋の虫の音。「昼から夜へ」はそのまま「夏から秋へ」とつながっている。

代表の言葉
夜も更け、全てのイベントが終わる。最後に代表の言葉。
「今日ここで皆さんが聞いたのは現代の音楽と映像です。しかし、蝉の声と虫の音は平安の昔から、ずっとこの庭に、繰り返し繰り返し響いてきたものです」
一気に時が遡る。夜から昼へ。秋から夏へ。現代から平安へ。
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