人類生存リスクに私たちの進化は間に合うのか?小松左京『復活の日』ユージン・スミルノフ教授の問いかけ

人類の存続のために

コロナ発生から3年半になろうとしている。コロナというパンデミックは一つの事例に過ぎず、この地球にはありとあらゆる人類生存リスクが潜んでいる。私たちは「いつか必ず訪れるその危機」を乗り越える準備ができているのか?小説ではなく現実の私たちは「そのいつか」に間に合うのか?

2024年初夏

コロナというパンデミックから3年。幸い私たち人類は生存し続けている。少なくとも2024年の6月の今、表面上はかつての日常生活を取り戻している。

2021年5月に読み返した小松左京『復活の日』

コロナの行く末がまだ見えていなかった2021年5月。有名な芸能人がコロナで亡くなり、みんなが底知れぬ不安を感じながらのGW。外出制限でどこにも出られない日々を過ごしていた。

コロナ、あるいはCovidー19というパンデミックがまたたく間に世界中に蔓延して「見慣れた日常」が「見知らぬ明日」に置き換わっていく。そんな状況にふとデジャヴ:既視感を覚えた。

高校、大学時代に夢中になって読んだ小松左京氏の本の中から『復活の日』を探し出して読み返した。そこに書かれていた「パンデミックによる世界崩壊」というカタストロフィーがこの2021年に現実化していた。

ユージン・スミルノフ教授の最後の講義

小説『復活の日』の中で、滅びゆくヨーロッパでヘルシンキ大学の文明史担当のユージン・スミルノフ教授の最期のラジオ講座の様子が描かれる。

一つの小説としては違和感を感じるほどの分量と熱量を持って記述されるスミルノフ教授のメッセージ。教授が語るのは「後悔」。

  1. 「人類の知性」の進化が「人類の滅亡」に間に合わなかったことへの深い後悔と反省
  2. この地球で獣の裔として生まれて、意識を生み出し、「自ら」と「宇宙」とその意識に映し出すことができるまでに進化した「人類の知性」への愛おしい思い
  3. それでも今の人類は大きなリスクに対しては対抗する何の手段も持たない生物の一つにしかすぎないという現実
  4. せっかくここまできた「人類の知性」を跡形もなく、まるで何もなかったかのように失ってしまう喪失感
  5. 地球がようやく創り出した「人類の知性」という珠玉のような可能性を失うことへの絶望感
  6. 一方で、他の歴史があり得たのではないか?との強い後悔
  7. 私たちにはもっと「知性」を進化させる可能性があったのではないか?の思い
  8. 争いや寄り道せず、もっと効率よく「人類の知性」を進化させることができていればこのパンデミックも乗り越えることできたのではないか?の思い
  9. 20世紀に大きく進化して変貌した科学に対して、それを支える哲学を創り出し得なかったことへの哲学者としての後悔
  10. そのあり得たはずのもう一つの歴史に貢献できなかった学者として忸怩たる思い

私たちは同じ後悔をしない?

小説ではない歴史の中にいる私たちはこのユージン・スミルノフ氏と同じ後悔をしないだろうか?

この『復活の日が書かれたのは1964年。出版から60年。この60年間、ユージン・スミルノフ氏は?あるいはその背中で小松左京氏は私たちに問いかけ続けている。

  • 私たちの知性の進化は「人類存亡の危機」に間に合うのか?
  • 「人類存亡の危機」に備えた準備をしているか?
  • 私たち人類の活動の優先順位は今のままで良いのか?

現在地の把握

問題解決はまず現在地の把握から。

どんな人類滅亡のリスクがあるのだろうか?

  1. 自然起因
    • 気候変動:地球温暖化・Snow ball eirth
    • 巨大な火山噴火:破局噴火
    • 小惑星や彗星の落下
    • 巨大地震
  2. 人為的
    • 凶暴なバイオテクノロジーによるパンデミック
    • 核戦争
    • 破滅的な環境破壊
    • 人工知能の暴走

それぞれのリスクはどのくらいの確率なのだろうか?地球の誰かがこれらの危機の発生する確率を計算しているのか?それはどのくらい?この全てを足し合わせた時に2100年時点で私たちが生き残れる確率はどのくらいだろうか?

優先順位の見直し

幸い、Covid-19を生き延びた私たちはこの幸運に甘んじることなく、冷静に自分たち人類が生き残る確率を正確に知り、それを人類全体で共有する必要があるのではないだろうか?

  • 一番リスクの高い危機はどれか?
  • 一番早くやって来る危機は何か?
  • その確率はこれからどれくらいの未来でどのくらいの確率なのか?
  • そもそも私たちの知らない他のリスクがあるのではないか?

知って共有した上で、私たち人類の活動の優先順位を人類全体として見直す必要があるのではないだろうか?

Small start

これはこの地球のどこかで誰かがこの課題に取り組んでいるのかもしれない。そうであればそれを知り、その活動に参画したい。

あるいはそうではなく誰も動いていないかもしれない。そうであればまず自分からこの取り組みを始めたい。

私たちが『復活の日』のユージン・スミルノフ教授の後悔をしないために!

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