復活の日 小松左京 

【座右の書ー他】
"Reading book, canon 1Ds mark III"

 この本、2020年5月の連休中に、多分35年以上を経て再読。もちろんコロナ影響を受けての事になるが、改めて小松左京氏のメッセージに打ちのめさる事になった。

 中学時代から大学時代にかけて、小松左京氏の本を読み漁った中での私のベストは「果てしなき流れのはてに」と「岬にて」であり「復活の日」ではなかった。これは今でも変わらない。それにしても・・・

 圧巻は、ユージン・スミノフ教授のメッセージ。とてつもなく長いメッセージであり書評によっては”唐突”とか”物語のStoryに関係なく著書のメッセージを書き込むという使ってはならない手法を使っている”等の批判もある。ちなみ映画にはこの部分はもちろん出てこない。

 しかし、小松左京氏が本当に訴えたかった事はこのユージン・スミノフ教授のメッセージに集約されていると思う。伝えたかった事・・・それは

 いつ、我々人類の手に負えない大きな災厄が私たちを押襲うのか?誰も分からない。明日かもしれない。100年後、1000年後かもしれない。私たちにとってのこの「見知らぬ明日」はいつやってくるのか?

 しかし、宇宙にとっては、その災厄はただの頻繁に起こる得る変化の一つでしかない。人類を滅ぼそうとする意思すらない。ただの変化。この災厄を残り越える事ができるかどうか?はその来るべき日までに私たちにどれだけの準備ができているか?どうか?に掛かっている。

 教授は大きく悔いる。来てしまったこの”来るべき日”までに準備が足りなかった。人類には”来るべき日までに”やっておくべき事がもっともっとあった。無駄や遠回りをしてしまった。結果、間に合わなかった・・・と

 一方で教授は、私たち人類が獲得してきた知性=宇宙から生まれたものであるにも関わらずその宇宙を認識するところまでなんとか成長してきた人類の知性がここで滅びることを”残念”と伝える。

 コロナウィルスが蔓延している今日。改めてこのメッセージが私たちに問いかける。2020年の我々はこのコロナウィルスという災厄を乗り切れるのか?また次の災厄に対する準備ができるのか?あるいは今、私たちは準備を始めようとしているのか?

 小松氏の作品に繰り返し出てくるテーマである、人類の知性の意味。宇宙をおぼろげなりにでも反映させることのできる意識を持つことの意味。それがなんの為に?という問いかけ。そしてその背景にある人類の知性に対する限りない愛情

 私たちは何ができるか?何をしなければならないか?

 それにしてもこの物語にはウィルスの変異、拡散、医療崩壊、世界各国の社会が急速に変貌し崩壊していく情景がつぶさに描かれている。コロナウィルスの蔓延してきた今の状況と比較してみると、なぜこんな状況があの時代の小松氏にここまでリアルに想像できるたのだろうか?と不思議でならない。

 なんせこの本の書かれたのは1964年。私のカミさんの意見では、彼はタイムトラベラーに違いない!

復活の日 (角川文庫)
生物化学兵器を積んだ小型機が、真冬のアルプス山中に墜落。感染後5時間でハツカネズミの98%を死滅させる新種の細菌は、雪解けと共に各地で猛威を振るう。世界人口はわずか1万人にまで減ってしまい――

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