手に余る事態のコントロールを自分の手中に取り戻すコツ【種蒔き】:品質トラブルの渦中にあるエンジニアへのエール=其の2

問題には解き方がある

大きな品質トラブルの渦中のエンジニアに送る2つ目のエールは【種蒔き】。目の前に押し寄せてくるアクションの嵐の中で少しだけ「次はどうなる?」を考え【種蒔き】する。問題解決Storyのちょっと先を手当てする【種蒔き】で手に余る事態のコントロールと、心の余裕を取り戻し、解決の効率を上げる。

手に余る事態

大きな品質トラブルは、それが発生した直後、やるべきアクションが次々に襲ってくる。事態は自分のコントロールを超えて大暴れしている。いわゆる手に負えない状態。アクションとその期限に翻弄されている。必死で対応するもののアクションはいつも自転車操業。

このタイミングでは一つ一つのアクションの期限はいつも「すぐに!」。いますぐやらなければならないことが目白押し。何時までに!24時間以内に!中には『本当の期限は昨日!』といった笑えない状況も良くある。

「すぐに!」のアクションに急き立てられる日々が続くと心に大きくダメージを受ける。結果、以下のネガティブスパイラルを引き越す。

  1. 急き立てられながらアクションをこなす
  2. やる意味が腹落ちできないアクションも多く、徒労感をおぼえる
  3. 少しずつ疲弊していく
  4. 言われたことだけをこなすことが精一杯の状態に陥る
  5. 投げやりになる
  6. 全てを人のせいにし始める
  7. アクションが「問題を解決する【仕事】ではなくて【作業】になってしまう」

身に覚えはないだろうか?

このスパイラルに陥らないための智慧が【種蒔き】。以下にそのステップ書き出す。

Step1:【俯瞰】する

大きなトラブルの日々の中ではどうしても目の前のアクションで一杯になってしまう。ここで前回のブログで書いた【俯瞰】が効いてくる。

全体の問題解決Storyの中で【俯瞰】して今を観ることで「現在地」が見えている。すると自然に「次に来るもの」が目に入ってくる。

Step2:次を考える

イメージは目の前のアクションに集中しながらも「頭をちょっと上げて先を眺めてみる」イメージ。

すると「真正面に大きな窪みがあるな」とか「右の方に行くと丘があるな」と全体像の中で、「次に来るもの」イメージが次第に湧いてくる。

これに対して【種蒔き】をする

Step3:人への【種蒔き】

まずは人への【種蒔き】。実感としてこれが一番効果が大きい。

次の問題解決の次のフェーズで助けを借りる可能性のある人に声をかけておくこと。

「今、こんな問題に取り組んでいて、ひょっとしたらこんなお願いするかも。」

こんな一言を伝えておくことが重要な【種蒔き】になる。

仲間に助けを頼めるコミュニケーション力。仲間を集められる能力は問題解決の中でも、とても重要なこと。これができるエンジニアは無敵。

Step4:アクションへの【種蒔き】

次に、今後必要になる可能性のあるアクションの中で、特に時間のかかるアクションを選んで先に仕込んでおく。ひょっとしてそのアクションは不要になるのかもしれない。それでも無駄になることも覚悟して【種蒔き】をする。時間という資源は先に仕込まない限りこれを取り返す方法はない。

無駄になる可能性も織り込んで、それでもこの【種蒔き】=準備をしておく。その効果はとてつもなく大きい。

あなたは「先の見える人」の評価を得られる。

事例:問題発生直後

  1. 問題発生の直後は、特に多くのアクションに追われる。どんな問題なのか?どこで起きているのか?問題の規模は?問題の深刻度合いは?などなど調べることは多い。
  2. また、不具合事象の観察と分析、履歴調査、記録の読み取り、関係者への聞き取り調査など正確な事実の把握がメインのアクションになる。
  3. これらのアクションに追われているフェーズの中でも、次のフェーズ「波及範囲の特定」を頭の片隅で考え始める。
  4. 波及の可能性のあるプロセスや製品、影響する部門や人にコンタクトをとっておく。
  5. 人と繋がっておくことを考えよう。

事例:原因究明時

  1. 原因調査のフェーズに入ると、問題発生のメカニズム究明に必死で取り組むことになる。
  2. 主要なアクションの一つは仮説の抽出。発生現象から起こり得るメカニズムを想定し、洗い出してリストにあげる。
  3. 次のアクションは、不具合現象の分析や解析。
  4. この3で調べた結果を2で挙げたメカニズムと照合する。推定したメカニズムの中で、分析や解析によって拾い上げた事実と整合しないものはこれを棄却していく。
  5. このステップでの【種蒔き】は例えば「再現実験」の準備をしておくこと。
  6. 再現実験には材料や設備の手配が欠かせない。これが時間がかかる。この時間がかかることの仕込みを事前にやっておく。
  7. 先に材料を用意し、設備を借りる手配も事前にやっておく。これが【種蒔き】になる。

メリット1:制御

一番のメリットは問題の制御を自分の手中にとりもどすことできること。

このように人やアクションの【種蒔き】をしてことで自分で事態を制御できるようになる。コントロールを少しずつ取り戻す。

【種蒔き】の回収の時点で目の前のアクションが「やらされ作業」ではなく、自分で考えて自分で決めた「計画した仕事」になっていく。

メリット2:効率

もう一つのメリットは自分で考えて決めたことを【種蒔き】をすることでアクションの方向が問題解決からぶれなくなる。

「問題解決という目標」に直接結びつく優先度の高いアクションを繋いでいく活動にシフトしていくことができる。自然と、優先度の低いアクションに手を煩わされることがなくなる。

結果と問題解決の効率が格段に上がる。

一番のメリット:自己効力感

何よりもこの【種蒔き】の効果は自分でやっている手応え。自己効力感とも言う。

  • 解決という目標に真っ直ぐに向かっている実感
  • 自分で自分がやることを決めている手応え
  • 主体的に仕事をしている喜び
  • 例え、自分の決めたアクションが間違いだったとしても、それも自分が決めたことであることからの納得感

これらが全て『自己効力感』として自分を支えてくれる。

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