企業人生の中で人としてとても敵わない!という人との出会いがある。俺も一緒に辞めたる!のKさんの一言は25年経っても忘れられない。
大きなトラブル
約25年前、大切なお客様で我々の製品の大きなトラブルが発生した。みんなで必死の対応をした。毎日深夜に及ぶ調査やレポートの作成、電話会議をくり返した。最終的にお客様の東南アジアの工場に出向いて製品の処置をしなければならないことになった。この処置に最低5名が必要だった。
出張メンバーの手配
5名のメンバーの手配に入った。処置のできるメンバーが工場だけでは集めきれず本社にも依頼した。結局、工場から4名、本社から1名のメンバーが決まった。早速、私の同僚のFさんが旅券やホテルの手配に入った。決まった集合場所やスケジュールを5名のメンバーに連絡を入れた。
ちょっとした遊び心
この同僚のFさんの連絡内容が物議を醸した。
彼も私も周りの仲間もこの毎日の対応に神経をすり減らしていた。毎日のレポート。そのレポートを説明する毎日の電話会議。事実を調べる調査。お客様のプレッシャーも、時間のプレッシャーも大変厳しいかった。
そんな中で、Fさんはこの出張連絡の冒頭にちょっとした遊び心でコメントを加えた。
あなたも参加しませんか?「南の島コンバットツアー!!!」現地では一流企業によるアトラクションも用意されています!
疲弊した仲間を和まそうした心優しい遊び心だった。
物議を醸して大きな問題に
しかし運の悪いことに・・・本社のマネージメントが出張のメンバーにスケジュールを尋ねた。それに対して「こうなっています」とこの連絡文を見せてしまった。ピリピリしていたマネージメントはこれに激怒。会社の一大事をなんと心得ているのか!と大きな問題となってしまった。マネージメントから工場トップに連絡が入った。
事務所での言い争い
この工場トップは鬼と言われた人だった。誰も逆らうことができない。親分肌でもあったが感情の起伏が激しく、一旦、怒り出すと誰も止められない。
マネージメントからこの工場トップに連絡が入った。虫に居どころも悪かったのだろう。「Fはとんでもないやつや!首にしろ!」指示がKさんに降った。KさんはFさんの上司だった。同時に私の上司でもあった。いつもはおおらかで、少しいい加減な所のある上司だった。
「どういう事ですか?」Kさんが工場トップに事情を尋ねた。工場トップから経緯を聞いたこの時のKさんはいつものKさんとは違っていた。「何言ってるですか!あいつかて毎日毎日必死でやってるやないですか!ただみんなを少し和まそうと思ってやっただけの事じゃないですか!何が悪いんですか!」
思いがけない反論に一瞬怯んで、その後、工場トップはさらに激昂した。激しい言い争いになった。事務所には二人の怒号だけが響いた。
俺も一緒に辞めたる!
激しい言い争いの最後に、Kさんは工場トップに「わかりましたよ!」と言い放った。そして電話機をとってFさんに電話をかけた。
おい!F!お前会社辞めい!俺も一緒に辞やめたる!!!
・・・この男には一生かかっても敵わない・・・それを知った瞬間だった。
人望のあるKさんは、その後、役員となり、我々後輩に多くの事業と志を残してくれた。未だにこの男には頭が上がらない。
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