会社員ってツマラナイって思っていませんか?
会社員、サラリーマンという言葉はなんとなく「ツマラナイ」イメージがないだろうか?私自身、就職して配属された時に「あーあ、俺も「サラリーマン」になったんやな」と思ってしまったことを覚えている。ひょっとして平凡で変化のない日々が待っていると思っていないだろうか?
しかしそれは、大きな思い違いだった。仕事を通じての多くのとんでもない人々と出会った。同僚、上司、仕事の仲間、お客さま、取引先。後輩。強烈な個性を持った人、化け物の様な人がウヨウヨしていた。人としてとても敵わない深い人間性を持った人物に出会うことができた。懐が大きく、私のメンターになってくれた人もいた。あの人のようになりたいとあこがれたずば抜けて仕事のできた人もいた。こうはなりたくない「反面教師」にも出会った。多くの人との出会いは会社人生を変化に富んだ日々にしてくれている。
それぞれの全ての企業が、生き残りをかけ、存在意義を自らに問い、理念を掲げ、理念と利益の双方を追い求めて、日々苦闘しながら戦っている。その戦いの現場には、鍛え上げられたとんでもない人材がいる。いくつかの事例を紹介してみたい。
出会った熱い企業戦士達①
私の会社人生の中で幸せだったのは時々で「熱い企業戦士達」に出会えたこと。何人かのエピソードを紹介したい。一人めの企業戦士=営業のNさんにはお客様との打ち合わせで「絶体絶命のピンチ」から救ってもらった。しかも思いもよらないやり方で。かなり前の事ではあるが、この人が私にとって今でも最高の「本物の営業」である。
Nさんの人となり
Nさんは、当時、米国に駐在していて、会社にとって一番大きなお客様をサポートしていた。文字通りの営業のエース。お客様からは深く信頼されており社内の人望も厚かった。
このお客様で品質問題が起こった時に、日本から米国に出張した時に、このNさんとの付き合いが始まった。私にお客様との対応のイロハを教えてくれた。
一番最初に、品質問題を起こしてしまった事を謝る私に掛けてくれた言葉。
- しょぼくれているやつがあるか。こんな時こそ「俺の出番や」って元気出さんかい!
- ええか。俺たち営業にとって品質問題はチャンスなんや。お客さんも困ってる。こんな時に初めて本物の付き合いができる。お客さまを知ることもできるし、自分を知ってもらうこともできるんや。一流の営業は実は品質問題が好きなんや。ついつい張り切ってしまう生き物なんや!
- お前は必死で品質問題の中身を解決すればええんや。お客さまとの交渉は俺の仕事。まかしとき!
・・・Enjoy the problem・・・の精神はこの人に教えてもらった。
背景
彼の担当していたこのお客様は当時の我々の会社にとって一番大かっただけでなく、市場でもTOP。リーディングCompanyだった。
このお客様の新製品シリーズのローンチがその年の7月に予定されていた。その前の冬、2月にNさんと量産準備の打ち合わせで、このお客様の東南アジアの工場を訪問した。打ち合わせの後、お客様のプロジェクトマネージャーから改めて「このプロジェクトの重要性」と「一緒にこのプロジェクトを成功させよう」とのコメントを頂いた。メッセージは「We are the partner !」だった。
ちなみに、このプロジェクトマネージャーは業界でも有名な切れ者。それだけに、一度怒らせると手をつけられない。誰も止めることのできない猛者だった。
問題の発端
帰国してこの新製品量産に対する最終準備が始まった。投入が始まり、初回品=認定評価品が出来上がった。しかし、この認定評価品の自社評価でこれまで見たことのない「異常現象」を見つけた。
この結果には頭を抱えた。量産の投入は始まっていて、市場での発売日は決まっている。時間はない。改めてこの「異常現象」を調べ直す。「市場では問題にはならない」ことが判ったものの万が一のこともある。お客様での使用条件を含めて評価すべきではないか?お客様に共同で評価することを提案すべきでは?
・・・一方で、このタイミングでこの結果を報告したらお客様も混乱するだろう。ローンチに影響するかもしれない。・・・自分の胸に収めておくべきなのだろうか?・・・正しい判断って何?・・・頭の中は堂々巡りで答えは出ない。
Nさんの答えは即決:お客さんとこ行こうやないか!
悩みに悩んだ末に、Nさんに相談した。答えは即決!「お客さんとこ行こうやないか!」「お客さんも言ってやんか?We are the parter って!」
この声に背中を押されて、早速お客さまにアポを入れた。国際線を乗り継いで、Nさんとお客さまの工場に飛んだ。
凍りついたミーティングルーム
お客様を訪問するといつものミーティングルームにいつも以上のメンバーが集まっていた。ミーティングルームの主はいつものあのプロジェクトマネージャー。
用意したレポートをプロジェクターで映す。順に試験条件と結果を説明。訪問の目的である「発見した異常現象」を説明した途端、鞭のような声が飛んできた。
あなたはわかっているのか!このプロジェクトの重要性を!こんなタイミングでこんな結果を持ってきて!私にどうしろと言うんだ!
ミーティングルームが凍りついた。張り詰めた空気の中で彼女の目が私を睨みつける。
Nさんの一言
しばらく続いた沈黙の後にNさんの声が静かに響いた。いつもの流暢な英語。
待ってくれ。こいつはこの結果を抱えて悩んでいた。そして必死の思いでここに相談にきたんやないか?あなたの「We are the partner」の言葉を信じてここにきたんやないか!
声のトーンが上がる。
そのこいつにそんな言い方をするんか!俺は長いこと御社を担当してきた。いつもそのことに誇りを持ってきた。御社を尊敬しているし、何よりも大好きや!!その御社がこんなことを言うんか!これは俺の大好きな御社じゃない!!!
最後は叫ぶように言い放った。
・・・先ほどとは違う沈黙がミーティングルームを包んだ・・・
沈黙を破ったのは、今度はプロジェクトマネージャーだった。
「私が悪かった。さあデータを検討しよう!」
冷静な彼女の声で共同での検討と検証が始まった。
その後
この「異常現象」はお客さまの条件を加えた評価でも問題がないことが分かり、予定通り量産が始まり、製品は予定の日に市場にローンチされた。
「感謝」から自分を磨く旅へ
自分の担当するお客さまを「心から好きだからこそ」「これは俺の大好きな御社じゃない!」と言えるNさんの言葉。本物の気持ちから出た言葉だから、このNさんの言葉だったからこそ、お客さまにの心にストレートに届く。
また、この言葉にすぐに自分を取り戻し、Nさんに素直に謝ったプロジェクトマネージャー。
「判断」「行動」そして「思い」どれ一つとっても自分にはとても敵わない。
こんな素敵な戦士たちがいること。そして一緒に仕事ができる事に感謝。「自分もこうなりたい!」の気持ちがその後の仕事の原動力になった。
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