稲盛和夫氏の経営には2つの柱がある。1つ目は『アメーバ経営』。正確な数字をベースにしたIQの領域。これは同時にフィードバックによるモチベーションでEQの領域もカバーする。2つ目は『京セラフィロソフィ』=哲学。EQのど真ん中の領域。この2つを両輪にして稲盛和夫氏の経営が在る。
アメーバ経営
アメーバ経営は社員一人ひとりを「経営者」として信じて編み出されたもの。「一人ひとりが経営者」この言葉はそのままの意味を持つ。
経営を担う経営者は、当然仕事に対する強い「モチベーション」もつことになる。この強い「モチベーション」をどうやって一人ひとりの社員にも持ってもらうのか?この問いに対する稲盛和夫氏の答えがアメーバ経営。
普通は経営者にか見えない経営数字。稲盛和夫氏はこの経営数字を全ての社員に解放した。『稲盛和夫の実学』では「ガラス張りの経営」として紹介されている。
空間と時間の細分化
ただ経営数字をガラス張りにするだけではない。まず空間を細分化する。アメーバと呼ばれる細分化された小集団に組織を区切る。この組織単位で経営数字を見える化する。これにより社員一人ひとりにとっての経営数字が「遠い会社の数字」から「自部門の数字」になる。自己責任が芽生え「うちの実績」という言葉になって普及する。
さらに時間も細分化する。一ヶ月。これが現場のアメーバ経営の時間の単位。月初に経営計画を立てて、月末の最終日のお昼12時ちょうどに経営数字が自部門の実績としてフィードバックされる。毎月、自分の仕事の結果をフィードバックしてもらう。こんなに面白いことはない。
経営者マインドとモチベーション
「今=毎月」の「経営指標=うちの実績」を目の当たりにする社員には自然と経営者マインドが培われる。良い結果は素直に仲間で喜び合う。良くない結果は仲間みんなでこれを受け止める。「次=来月」の「経営指標=うちの計画」をなんとか向上しようと夢中になる。これが次の月へのモチベーションになる。
このPDCAサイクルが毎月回る。合計で年間12回のPDCAサイクルを回すことになる。今月うまくいかなくてもすぐに次のチャンス=来月がやってくる。誰もが一年に12回のチャレンジのチャンスの中にいる。
入社以来、何十年もこのサイクルの中で生きていた。計算するとこのサイクルと450回以上繰り返してきた。これが当たり前だと思っていた。外の世界を見て初めて「自分が稲盛和夫氏の大きな掌の中にいたこと」に気づく。
京セラフィロソフィの原点
もう一つの柱が京セラフィロソフィ。基本は単純な規範。
- 嘘をつかない
- 人に迷惑をかけない
- 正直であれ
- 欲張ってはならない
- 自分のことばかりを考えない
この基本に、稲盛和夫氏が必死で経営をする中での気付きを書き足してこられた。
他の叡智との共通点
経営の現場で思考を深めてこられた。改めてこのフィロソフィを読み込んでみると「7つの習慣」や「原因と結果の法則」と同じ成功哲学・原則が稲盛氏の独特の表現で示されていることに気づく。
- カラーで見えてくるまで考え抜く
- 感性的な悩みをしない
- 行い、思いは必ず結果を作る
- 渦の中心になる
IQに対するブレーキ
同時にこのフィロソフィが、IQの強いアメーバ経営を「数字達成ゲーム」や「比較競争ゲーム」に陥らせないようにブレーキをかけている。
- 動機善なりや、私心なかりしか。
- 心をベースにした経営
- 人生の結果=考え方 X 熱意 X 能力
- 利他の心
バランス
IQとEQ。異なる2つを両輪として稲盛和夫氏の経営がバランスの上に成り立っている。それに加えてIQの仕組みを突き詰めた先にEQである「モチベーション」が用意してありこの2つを繋いでいる。
改めて、一人の人間としてもIQとEQの両方を兼ね備えた人格で在りたいと思う。
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