中学1年の夏休み明けから学校に行けなくなった中学生。不登校は1年半続いた。中学2年を終える春に一つの岐路を迎えた。彼女が自分の人生を動かし始めたきっかけは【存在承認】と一つの【質問】。
不登校
彼女は中学1年生の2学期から学校に行けなくなった。夏休み明けに不登校は始まり2年生の3学期まで続いた。
受け入れられない両親
20年以上前のこの当時から「不登校」の子どもたちが少しずつ増え始めていた。とは言え、まだまだ学校でも不登校の子は珍しかった。
彼女の両親にとって「子供が学校に行けない」状態は普通に受け入れられることではなかった。「行けない」状況に驚き、焦り、深く悩んだ。
まず「学校に行けない原因」を探そうとした。最初に彼女に理由を尋ねた。しかし、何度訊いてもその理由は、本人ですらはっきり分かっていなかった。
学校に行かせる試み
両親は彼女をなんとか学校に行かせようと試みた。「学校に行くことの大切さ」を言い聞かせた。「学校に行かないことのデメリット」も説いた。
この時の両親の望みは娘に学校に行ってもらうことだった。
不登校の1年半の間、夫婦で何度も何度も話し合った。本を読み漁り解決策を模索した。親子でカウンセリングにも通った。フリースクールも探した。
どれも効果はなく不登校は続いた。
【存在承認】
彼女が2年生の3学期を終える頃、散々悩み抜いた末に両親は一つのことに気づいた。
- 学校に行こうが行くまいが、娘は大切な娘であること
- 何よりも「娘が生まれてきてくれて今ここに居てくれること」への感謝
両親の彼女への存在承認だった。
彼女に示した事実
彼女が3年生になる春休みに。両親は彼女に一つの事実を示した。
- このまま学校に行けなくても行けるようになっても、1年後には中学を卒業する。
という事実。
【質問】
この事実を示した上で一つの質問をした。
- どうしたい?
2つの選択肢があることを示した。
- 高校に行かずに就職する
- 高校に進学する
この時の両親の問い掛けは、説得でも言い聞かせでも誘導でもなかった。ただフラットな【質問】。
彼女がどんな選択をしても親として全力で娘を支援する思い。その覚悟のベースには存在承認があった。
彼女が出した答え
1年後自分は中学を卒業するんだ!?
彼女は初めて自分と向き合った。初めて自分で自分の将来を考え始めた。時間をかけてしっかりと自分自身との会話を始めた。
- 自分は何が好きなのか?
- 自分が何をやりたいのか?
自分が勉強は嫌いではないことに気づいた。
3年生になって中学校の「心の部屋」に通い一人で自習を始めた。彼女は自分で自分の人生の歯車を回し始めた。
その後と現在の彼女
その後、彼女は高校に進学した。
高校生の時に「自分の住む地域で活躍する医者のドキュメンタリー」を観て小児科医になることを決めた。少し方向が変わったが、現在は産婦人科医として働いている。
仕事もしながら2人の子育ての日々を生きている。
「言い聞かせる」vs「質問する」
不登校の期間、両親はずっと彼女に教え、説得し、言い聞かせてきた。たくさんの言葉を語った。でもそこにあったパラダイムは「学校に行ってほしい」だった。この言葉は彼女の心に届かなかった。
彼女に届いたのは
- あなたがそこに居てくれるだけでいいという存在承認。
- そしてあなたはどうしたいという質問
この2つで彼女は自分で自分の人生を動かし始めた。
心の扉
誰も説得によって人を変えることはできない。すべての人は堅くガードされた心の変化の扉を持っており、その扉は中からしか開けられない。説得や感情に訴えることによって他人の扉を外から開くことはできない。
マリリン・ファーガソン・・・アメリカの社会心理学者
自分を動かせるのは自分だけ。両親でも子供を外側から動かすことはできない。彼女が自分の心の扉を内側から開いたきっかけは
- 自分の存在を無条件で受容してくれる存在承認
- 自分自身の心と対話を始めるきっかけとなる質問
この2つだった。
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