フェルメールと17世紀オランダ絵画展 ー 修復後の「窓辺で手紙を読む女」@大阪市立美術館

徒然なるままに

「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」

7月24日の日曜日に大阪市立美術館の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に行ってきた。大阪市立美術館は初めて。天王寺駅で降り、人々で賑わっているてんしば公園を抜け、城門をくぐり抜けた先に立派な美術館が見えた。

フェルメールの思い出

元々、絵心はなく、絵画に特に興味があった訳ではないがフェルメールにだけは惹かれていた。

以前、ヨーロッパに出張していた頃、帰国の前日はルフトハンザ航空のハブ空港のあるフランクフルトでの宿泊が定番だった。このフランクフルトの街のシュテーデル美術館にフェルメールの「地理学者」があることを知り、帰国の朝に見に行った。ホテルからは歩いて行ける距離にシュテーデル美術館はあった。

「地理学者」には端正な男性が描かれていた。彼は左手をテーブルを把み、右手にコンパスをもち、フェルメールの「青」のたっぷりしたローブを纏っていた。左の窓から差し込む強い光に向かって上げた顔は仕事に対する自信に満ちて見えた。

その後、2015年の「福岡伸一のフェルメール光の王国展リ・クレエイト」ではフェルメールの全ての作品が経年劣化する前の色彩とテクスチャーで再現されていた。

  • 「レースを編む女」では絵の中の全てが彼女の手先の一点に集中していた
  • 「真珠の耳飾りの少女」では少女の瞳と耳飾りの真珠の小さな光の一点が私を見つめていた
  • 「デルフトの眺望」では絵の枠を超えてどこまでもデルフトの街が広がっていた

修復後の「窓辺で手紙を読む女」はどうだろうか?

「窓辺で手紙を読む女」の修復

この展覧会の目玉は修復の前と後の「窓辺で手紙を読む女」の展示。修復の経緯も丁寧に説明してあった。

  • 背景の壁が塗りつぶされていることは元々知られていた。
  • この塗りつぶしはフェルメール本人の手によるものと思われていた。
  • しかし分析によって壁の部分の断面構造が判明。元と絵の層と塗りつぶしの層の間に埃の層があることがわかり。
  • この埃の層の厚さから下の絵が描かれてから塗りつぶしがされる迄に少なくとも数十年が経過していると推定された。
  • この事実から塗りつぶしはフェルメールによるものではないと判断された。
  • その後4年をかけて丁寧に上の絵の具を取り除いて行った。

実際の修復作業の様子も動画で流れていた。解剖刀で本当にごく僅かずつ絵画の表面を削り取っていく作業の緻密さ。段階を追って少しずつ天使の絵が現れる様子を見ることができる。

「窓辺で手紙を読む女」のBefore & After

メインの展示室に修復前の複製と修復後の実物が展示してあった。Before & Afterを比べて見ることができる。

修復によって現れたのは「天使が仮面を踏んでいる」画中画。その寓意も説明されていた。キューピットが示唆している「誠実な愛」のみが、仮面が示唆する「欺瞞」を乗り越えることができる。という意味らしい。

しかしこの天使よりも気になったのは修復前と修復後の絵画の色調の違い。

  • 彼女の後ろの壁の白さ
  • 左の窓から差し込む光の眩しさ
  • 開いた窓の枠の青色
  • 窓の桟の格子の白い光のスポット

など、修復前の絵よりも明らかに際立っていた。描かれてはいない「明るい窓の外の風景」や、その「外から窓を通して入ってくる風」までを感じた。光と風の中で唯一人、一心に手紙を読み耽る彼女の姿がより鮮明に浮かび上がっていた。

展覧会の今後の巡回予定

この「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」は既に東京と北海道の巡回を終えているとのこと。大阪市立美術館は9月25日まで。次は宮城県美術館へ巡回する予定との事。修復のBefore & Afterを比較して観ることのできるこのチャンス。行ける方は是非、足を運ぶ価値があると思う。

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